日本のものづくりはこうした町工場が支えてる

工場虫

工場虫

私は社会人キャリアのスタートが油まみれになって働く町工場だった。来る日も来る日も、親会社から送られた図面の通りに部品を仕上げるお仕事。
まず、部品の縦横奥の寸法がとれる材料から始める。状態はボコボコの鉄塊だ。フライス旋盤で一面を削って、もう片方の面を削って、ようやくある程度平行面が出たところで今度はその垂直面を削る。
そうやって形を整え、寸法を近づけながら図面どおりの形状に仕上げていく。穴はボール盤で空け、穴を仕上げる際にはエンドミルを使う。より精密に面を仕上げる場合は、旋盤ではなく、研削機を使用する。これは砥石が高速回転しているもので、0.005mm単位くらいずつで極めて薄く削っていくものだ。やたら神経を使う作業だが、うまく仕上げるととても綺麗だ。
そんな現場から遠ざかって、もう7年以上になる。途中で設計畑を歩いたり、いまのシステム屋に落ち着いている。
とはいえ、いずれも製造業から離れたわけではない。やはり日本は「ものづくり」の国だという自負がある。そういう意味では直接的に今の仕事は外れてるのかもしれないけど、いろんな製造系企業に関わる事が出来て、かなり勉強になる。
たまには自分の手で加工してみたい、設計してみたい…というときもある。
さて、私はマンガというもの自体をほとんど読まないのだが、タイトルが気になったので読んでみた。物語としてはハチャメチャなのだが、「町工場の現実」のようなものがおそらく描きたかったのだろう。それは伝わってきた。いや、経験者だから伝わったのかもしれない。おそらく細かいことに関しては経験者でないとわかんない。伝えたいところは多分そこでもあったのだろうけど、ちょっと商業的にはどうだろうといった感じ。個人的には、でもそれでいいと思った。
そうそう、現場にはたいてい怖いおっちゃんがいるもんだ。仕事は出来るんだけどヘマをするとスパナが飛んでくるような人が。自分のときにもいた。が、2年ほど前に他界したそうだ。随分とお世話になったが、私が会社を辞めた後、不況になってリストラされたそうだ。それで風の噂のように聞いたので、お葬式がとっくに終わったあとに知ったのだ。
そういうのをこの本で思い出した。まぁ実際、現場に戻ることなんて無いだろうなー…。いろいろとつらいことが多い。