人々の生活のため電車が動けば魚が死ぬ

関東では、ここのところ若干暖かくなってきた…と思ったら雪も降ってしまうほどの寒さに戻った。うらら春はもうちょっと先のようである。
寒さというと暖房需要が増えるのに、例によって計画停電に影響する。列車ダイヤは主要な部分では回復してきているものの、遠方になればなるほど豪快に終日運休していたりする。ともかく電力が足りない。
地域が停電になっても、必ずしも電車が瞬時に止まるわけではない。JR東日本では東京電力からの電力供給を受けてはいるものの、自前の発電設備を保有している。
まずは、川崎市にある「JR東日本川崎火力発電所」である。1号機から4号機までで合計すると約65万kW程度の出力がある。東海道新幹線マルスシステム、JR総研などにその電力は使われている。続いて「JR東日本信濃川発電所」。これは関東ではなく、新潟県小千谷市にある水力発電所だ。日本一の大河である信濃川を利用している。これが約44万kWの出力。
上記、2つの発電所でほぼJR東日本の電車および各設備の電力供給をまかない、足りない分は東京電力から購入しているといった具合である。ただ、3.11大震災の当時、JR東日本信濃川発電所では縮小稼働していた。
というのも、話を遡ること2008年。この水力発電所では、許可された水利権よりも過大取水・過少放流という不正が発覚した。要するに「この水量だけ使ってもいいよ」と決められた水量以上に使っていたわけだ。
その影響として、下流域に水が流れなくなり、ついには枯れて、魚は川を遡ることが出来ない。魚は死んでいく。川で漁を営んでいた漁師は廃業に追い込まれた。
そんな状況に行政側も動き、2009年2月13日、国交省北陸地方整備局JR東日本の水利権を取消すと発表した。
JR東日本の水力発電所が許可取り消しへ、信濃川からの不正取水で(nikkeiBP)
これをうけてJR東日本側は発電用取水停止した。再び取水が認められたのは翌年になってからのことである。認められる条件としては、生態系保持のため試験放流を実施することとなっていた。
そういうわけで、JR東日本信濃川発電所はフル稼働状態では無くなっていた。不足分はまず川崎の発電所をフル稼働状態にし、それでも足りない部分は東京電力から購入することにしていたというわけ。
で、今回の大震災により東京電力からの供給を受けることが難しくなった。電力が足りない。JR東日本としてはちょっと困ったはずである。
助け船となったのが、発電所のある十日町市の提案と信濃川河川事務所からの指示により、試験放流を中断し、フル稼働状態にしても良いという許可が下りたことだった。
信濃川発電所について(JR東日本)
現在は、両発電所ともにフル稼働状態。足りない部分についてやはり節電運行を強いられているという状況である。そして、信濃川下流域はおそらく今後は枯れていき、ともすると魚は死んでいくのだろう。我々の生活のシワがそこに寄っていく。
関東在住者のために福島県の住民は大変な迷惑を被ったように、また、関東の外で被害を受けるものはあるのだ。