戦国時代の終焉 - 「北条の夢」と秀吉の天下統一 (中公新書(1809))

戦国時代の終焉 - 「北条の夢」と秀吉の天下統一 (中公新書(1809))

関東の人間というのは、徳川幕府についてはそれなりに知っていても、後北条氏(鎌倉時代の執権・北条氏と区別するためにこう呼ばれる)のことについては、あまり知られてはいないと思う。後北条氏といえば、「小田原評定」で「秀吉に屈した」家という印象。しかも、楯付いたが為に全部に近い領土を失ってしまった家、という印象ではないだろうか。
だが、北条早雲から始まった関東制覇の道のりはいかにも清々しいものであるし、実のところ後北条家ほど、戦国期において民政に力を入れた家というのはそうそう無い。具体例としては、それまでの日本史上最も低いと言われる「四公六民」を実現しているのだ。通常は五公五民で、年貢として半分の米を納めるというもの。これに対し、「四公六民」はお上の取り分を1割減らし、農民府何を軽減しているのだ。
早雲の出発点が圧政からの解放だった為でもあるが、これを代々受け継いでいた点も評価に値する。
さて、本書の内容は、その後北条氏が滅亡に至る手前、「沼尻の合戦」に焦点を当てており、中央政界との連動を探っている。これは、子牧・長久手の戦いと密接に繋がっているというもので、まず沼尻の合戦の知名度が低いし、説そのもの新鮮さも手伝って、誠に読み応えがある。由良氏、佐竹氏など近隣の大名、豪族などの関わりも書かれており、関東における戦国時代を見直すには良い本だと言える。