2008年秋の大旅行・みちのくの旅1日目

たいそうな表題だが、単なる2泊3日の家族旅行である。
いや、しかし1歳半にも満たない子供を連れて、しかも嫁は安定期に入りかけとはいえ妊婦であるので、割と無謀であることに加え、リスクも伴う旅行である。なら行くなよこの人でなしを言われること請け合いだが、そこに旅路があるから行くのである。
そんな屁理屈は置いておき、今回のプランは前述の状況もあることから、慎重に慎重を極めた。とりあえず威勢よく海外でも行くかー!と大言壮語を発したものの嫁により一蹴(海外は病院とかあれなので)。ならば東北はどうだということで何とか了承を得た次第。東北としてもかなり広いので、どこが良いだろうかと考えたところ、ベタですがやはり奥州といえば平泉ということで、中尊寺とか毛越寺がまず頭に浮かんだ。実際のところ、ギリギリまで平泉に行く気満々だったのだが、まぁ夫婦ともに行ったことあるということで回避し、なんとも新鮮味あふれる旅情となったのであった。以下、1日目から。

初日。昨日の仕事も当たり前のように残業をこなし、遅くに帰宅。そのままとりとめもなく布団へ。その経緯を経て、朝4時半とかいう漁師みたいな時間に起きて(実際の漁師さんがもっと早いが…)、急いで身支度をし、5時半くらいに出発。進路は北である。敵は白河関に彼方にあり。いざ出陣である。
とはいえ、いきなり給油ランプが点滅し始めたので、出鼻を挫かれたかのようにすごすごとガソリンスタンドへ。通勤が電車の為、日常的に給油を行なわなくなって久しいが、いつのまにかレギュラーガソリン価格が120円台になっていた。私の場合は長年贔屓にしているコスモ石油(コスモ・ザ・カードだとけっこう割引してくれる)の最寄店で119円であった。50リッター入れて6000円ほどである。高騰していた時期から3分の2程度だから、いかに安くなったかがわかる…ていうか元に戻ったというか。まぁいつまた上がるかもしれない。
給油を終え、いざ首都高に乗り北へ走る。今回は首都高を北端の川口まで行って、川口JCTから東北道に乗る。これはNEXCOがやっているETCキャンペーンの「ドラ割」を利用する為でもある。「ドラ割」とはこれまで行なわれてきた時間帯割引とは違って、いわば鉄道の周遊券の高速道路版のようなもので、定められた発着エリアから行き来し、周遊エリア内では自由に往来出来て定額になるというものである。今回私が利用させていただいたのは、「仙台・宮城 遊遊フリーパス」というもの。発着は川口JCTや三郷JCTで、東北道あるいは常磐道を通過し、宮城県近郊を周遊出来る。周遊エリアの限界は、北は平泉、東は石巻、西は山形、南は白石である。どこも魅力的な観光地なので、これを使わないのは損というものだ。肝心の料金だが、3日間の周遊エリア乗り放題で9900円となっている。これは三郷JCTから平泉ICの片道料金と同額であるので、少なくとも半額程度、周遊エリアをうまく使えば使うほどお得になる。
定額になると途端にケチな気分が消えうせるのが人間の性であることから、この周遊エリアでこれでもかというくらいに周ってギリギリまでお得感を味わいたいものだが、折しも日本海側を中心として雪が降っており、特に岩手方面や山形方面は車の走行が不安視されたため(無論、夏タイヤのままであるし)、この3日間は宮城県内のみとなった。
さて、道中の話。やはり途中の首都高は相も変わらず杜撰な道路で時折混雑していたが、東北道になると快調そのもの。あとで気づいたけど、東北道ってびっくりするほどトンネルが少ないんですよね。東名とか名神に比べると驚くほど少ない。少ないっていうか無いって表現が正しいと思う。なんだろう、トンネル利権とか無いんだろうかと思ってしまう(邪推もいいところだ)。あと、紅葉の残る時期ってのもあったけど、景色が良かった。また、磐梯山など高い山々のほうは雪化粧だったので、これもまた良かった。

目に楽しく、走行中飽きることは無かった。途中、上河内SAなどで軽く休憩した程度で昼前には仙台を過ぎ、古川ICを降りた。そこから国道47号線鳴子方面に20分ほど走ると岩出山である。
ここはかつて岩出山城として、かの有名な伊達政宗が12年ほど居城としたところだが、現在では、かつてを偲ぶ公園程度の状態である。割と大々的に伊達キャンペーンを張ってる割にここの扱いは低いらしい…。他には山頂の広場のほうに伊達政宗の像があったが、途中の道で良い感じの紅葉があり、そちらに見とれていた。

伊達キャンペーンといえば、どちらかといえば力を入れているのが有備館であろう。ここは、旧仙台藩の学問所だったところで、当時の書院造の建物が現存している。庭はよく整備されていて、池の周りを一周する途中に向こう岸から茅葺きの建物が見れて風情がある。

ささやかながら、紅葉も素晴らしかった。

ここで残念なことに、やたら冷たい雨が降ってきて岩出山一帯の観光を終えることになった。蔵のある通りなども行ってみたかったのだが…やむを得ず。引き続き国道47号線を走り、途中、「あ・ら・伊達な道の駅」というちょっと名前がアレな(だって折角、「池月」ってとても綺麗な地名なのにそんな観光狙いすぎなネーミングにしなくても…と思った)道の駅で、カレーを食したりして(だってカレーにはずれは無いから)さらに進むこと30分ほどで目的地である鳴子温泉郷に到着した。
鳴子といえば、こけし桃太郎電鉄でその存在を知った地名である。こけしが名物というのも割りと鮮烈だった。なんだか街中も欄干がこけしだったり、さりげなくいろんなところが「こけし化」していて面白い。
無謀なことに特にリサーチするわけでもなく鳴子温泉内に来てしまったので、とりあえず中心地に向かったところ、鳴子温泉駅前に駐車場があった為、そこに車を停めた。30分以内は無料で、以降は30分ごとに100円とのことだった。すぐ目の前に足湯発見。水を得た魚のように我先に足湯に浸かる。極上の幸せである。もちろん無料である。(一応、確認はした)

他、温泉風情も堪能し、足湯ならぬ手湯があったり、みやげ屋でベタながら名物であるこけしを購入したりして鳴子温泉街をあとにした。こけしなんて絶対に買わないと思っていたが、折角来たんだからと修学旅行生みたいな情熱の欠片が飛び散ってかってしまったよ。ちなみに嫁さんは嬉々として漆器などを買っていた。どれだけ食器類を買えば飽きるのだろうか彼女は…。

本日の宿泊先は鳴子温泉郷ではあるが、ちょっと離れたところにある鬼首温泉というところだ。鬼首はオニコウベと呼ぶ。何だか不吉な名前ではあるが…。その途中、間欠泉があり、嫁が見たことがないらしく、見たいというので立ち寄ることに。うん、まぁ普通に間欠泉でした。他に珍しい地熱発電所なんかもあって、そちらにも行きたかったのですが、何やらこのあたりから道端に雪が積もっている状態に…。
宿に向かおうとしたところ、カーナビが指し示した道を行こうとすると、完全に雪が積もった道路に入ることになり、さすがの嫁も怯えだしたので、宿オーナーに問い合わせたところ、「そちらではなくて、回り道で行けるほうがメインルートです」とのこと。このまま雪道を無理に進もうものならば、沢に転落するところであった。カーナビあなおそろしや。
この旅行の為に、夏タイヤ装備では心もとないが、かといって過剰装備を用意するのもバカげていると、オートソック製の布製タイヤチェーンを用意しておいた。布ということで、効果の程には懐疑的だったけれど、これが意外なほどに効いていた。実際、路面が凍りまくっていたわけではないけど、試しに敢えて凍っている箇所を通ったところ、驚くほどのグリップ力を感じた。これはイイシロモノです!しかも取り外しも簡単なので、本当に緊急用には良いと思った。ノルウェー生まれは伊達じゃない。ただし、100km程度しか使用に耐えない消耗品であることも留意の上での使用のこと。ちなみに下が愛車プレマシーに装着した状態。

さて、宿に到着である。1日目の宿は「森りんこ」という名のペンション。とても見た感じの良いしっかりした造りのログハウスって感じだ。

外だけでなく内装も一般のペンションに比べ(あくまでも自身の経験であるが)しっかりしており、さすがに豪雪地帯だから、頑丈なのかなと思ったりした。あとで仕入れた知識だが、ログハウスってちゃんと手入れすれば100年はもつものらしい。妙に納得した。チェックインしてすぐに鬼首温泉に浸かり、旅の疲れを癒す。何しろここまで1日で500kmの運転である。充実の1日だったので、ひどく疲れていたわけではないが、やはり温泉は心も体も癒す。そして食事である。味の専門家ではないので、うんぬんは言わない。美味しかった。齢30にして初めてのチーズフォンデュ。地発泡酒鳴子の風」も2本空けた。

やはりペンションは夕食あってのものだなと痛感。前に阿蘇で素泊まりでペンションに泊まったことがあるが、なんだかよそよそしい感じがして、内心恥ずかしい思いをした。ペンションをやっておられる方は食事にこそ力を注いでいるのだから、食事抜きなんてね。酒やつまみを大量に持ち込んでくる(そりゃだめだろ・笑)学生さんなどがおり、失笑したものだ。まぁそんなおじさんの四方山話は良いとして、食事後は森りんこのオーナーさんとしばしの会話を楽しんだりして、1日目はおしまい。